• 人権侵害救済法って何?
  • 現在民主党の「人権侵害救済法PT(プロジェクトチーム)」が今国会での成立を目指して進めている法案です。元は「人権擁護法」と言いました。

  • 何のために作るの?
  • 国民による人権侵害や差別を監視するために「3条委員会」(人権委員会)という組織を作り、国民の言動を取り締まるのがその目的です。

  • 3条委員会て何?
  • 3条委員会とは、政府からの独立性を保つ機関として、国家行政組織法3条(内閣府設置法49条)に規定される委員会のことです。

    民主党案も旧政府案(自民、公明)も、人権委員会をいわゆる3条委員会として立案し、委員の任命は国会同意人事としています。

  • どうして3条委員会にこだわるの?
  • PTでは「どんな妥協をしてでも、3条委員会を作ってしまう」という事を確認しています。

    3条委員会を設置することがPTの目的です

    3条委員会は、政府(法務省)の管轄下になりますが、裁判所とも警察とも無関係の組織です。

    つまり、我が国に「人権と差別」に関しては、裁判所、警察などから独立した、新たな裁判権や制裁権を持つ組織ができあがることになります。

    制裁権限などは、

    導入後の運用状況により、必要性を見極める
    としていますが、制裁権の放棄はしていません。


    とても危険な問題点
  • 1.人権侵害の定義がありません
  • 人権侵害とは、不当な差別、虐待その他人権の侵害をいう
    ~第二条
    と定義されていますが、どのような行為が不当な差別に当たるのか、具体的な記載がありません。

    委員会の人々が「差別だ」と考えれば「差別」となる。

    つまり、人権委員会の胸先三寸で決められてしまう、という事です。

    この問題は、中間報告でも是正されていません。

  • 2.三権分立に反します
  • 法案では人権委員会をいわゆる「3条委員会」として設置するとしています。

    3条委員会は、政府(法務省)の管轄下になりますが、裁判所とも警察とも無関係の組織です。

    つまり、我が国に「人権と差別」に関しては、裁判所、警察などから分離・独立した、新たな司法権や捜査権を持つ組織が出来上がることになります。

    もしこのような機関を設置するとしたら、これは日本の法体系の大幅な変更になる大問題です。

    3条委員会は、政治からの独立性を守るために国家行政組織法で定められた行政組織ですが、我が国は三権分立が成り立っており、強いてそのような機関を設置する積極的な理由がありません(委員の任命は国会同意人事)。

    また、同法案は国連人権委員会決議「パリ原則」を元に立案されたものと思われますが、この決議の趣旨は、政府への監視、勧告を目的としています。

    かりに我が国の三権分立に問題点があり、その信用性や中立性に疑義がある、あるいは我が国の行政に人権侵害のおそれがあると仮定しても、法案の監視対象になるべきは行政です。

    しかしこの法案は私たち国民をその監視対象としています

  • 3.一握りの人々の意思で国民が監視されます
  • 中間報告を見れば、人権侵害救済法PTは、いわゆる「3条委員会」を作ることを第一目標としているかのように見えますが、委員の要件として、

    委員長及び委員の任命に当たっては、委員のうちに人権の擁護を目的とする団体若しくは人権の擁護を支持する団体の構成員、または人権侵害による被害を受けたことのあるものが含まれるよう努めなければならない

    ~第十一条第2項
    と定められています。

    これは「特定傾向の人たちを積極的に委員にする」という事で、特定の人々の意思によって国民の言論が監視されるという事です。

  • 4.近代法の基本的理念に反します
  • 人権委員会の委員には、特定の傾向を持った人が優先的に選ばれます。

    3で述べたように、委員の要件として、

    委員長及び委員の任命に当たっては、委員のうちに人権の擁護を目的とする団体若しくは人権の擁護を支持する団体の構成員、または人権侵害による被害を受けたことのあるものが含まれるよう努めなければならない

    ~第十一条第2項
    と定められています。

    この条文も、中間報告においては未改訂です。

    これは、人権侵害の被害者の立場の人間が優先的に選ばれるという事です。

    被害者及び、被害者の賛同者が、裁判で言うところの「被告」を裁くという、前近代的な発想です。

    日本国憲法は、復讐を禁じています。

    そのための第三者機関として、司法権を有する裁判所があります。

    しかし、この法案は、被害を受けたと称する人々とその人々を日頃支援している人々が「裁判官」の立場になり、彼らが「加害者」だと認定した者を裁くという、前近代的な法案になっています。

    また制裁権限については、

    導入後の運用状況により、必要性を見極める
    としていますが、依然として制裁権の放棄はしていません。

    下記の法律案に見られるように、そもそもの立案主旨から、制裁権を想定していることはあきらかです。

    これまでの議論でも、制裁権限を与えなければ、法案の実効性が見込めないとの論調が大勢を占めて来ました。

    施行されれば、その実行性を担保するために、制裁権を付与すべしという議論になるでしょう。

  • 5.日本人が我が国で外国人に裁かれます
  • 人権委員に、国籍条項がありません。

    地方参政権を有する者に限定する
    とだけあり、民生委員も同様であると中間報告は指摘しています。

    しかし、民生委員とは

    社会奉仕の精神を持って、常に住民の立場になって相談に応じ、及び必要な援助を行い、社会福祉の増進に努めることを任務として、市町村の区域に配置されている民間の奉仕者。

    民生委員法(昭和23年法律第198号)
    となっています。

    民生委員の権限は、司法権や警察権とは全く性格の異なるものです。

    人権委員会のように、そのような権限を有するか、あるいは有するおそれのある立場の者が、日本国籍を持たないという設定は異様です。

    また、解放同盟はこの指摘について

    人権は国籍に関わらずすべての人に認められているものであり、定住外国人の人権擁護委員がいることは共生社会実現のためにも有益

    と主張していますが、これは論理のすり替えです。

    救済される対象は、時として人種や国籍とは無関係になりますが、権力を行使する側は別の問題であり、混同させてはなりません。

  • 6.マスメディアを規制対象から外すのは、国民に対する差別です
  • 中間報告では、一般国民の言論や行動を規制しようとする一方で、マスメディアに対する規制は設けないとしています。

    報道機関等による人権侵害については、特段の規定を設けないこととし~

    抵抗の多いマスメディアを懐柔するために、規制対象から外しました。これはおかしな事です。

    最も大きな影響力を持つマスメディアの方こそ、規制の対象であるべきだと私たちは考えます。

    しかし、この法案は、より影響力の少ない弱者である国民個人を狙い撃ちにしています。

    また、もし、国民個人の言動が社会正義に反するなら、メディアだけが許される理由はありません。

    規制は全ての人々に適用されるべきで、そうでなければ法の下の平等に反します。

    言論の自由は一握りの人々だけに許される権利であってはなりません。